blog 「友達のまま」(5) Story Box
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「友達のまま」(5) 友達のまま 2005年06月09日[17:36]
 「はい、みちる。約束のコピーよ」
「ごめんね、次の放送の時で良かったのに」
「うん、でもみちるがせっぱつまってたみたいだったから」にこりと笑う玲奈に思わず見とれる。…かわいいなあ…美少女って感じで。そらポエム読みも様になるっちゅーねん、リクエストじゃなくてファンレターもくるっつーねん(笑)…まあそれはさておき。
 
 大会の二日後、しばらく部活も休みになるので家でのんびりしていたあたしに、家までわざわざコピーを届けてくれた玲奈。
「せっかく来てくれたんだからさ、上がってよ。冷たいもんでも出すわ。」
「そう?じゃあお言葉に甘えて」
「ちょっと散らかってるけどさー、ゆっくりくつろいでてよ」玲奈をあたしの部屋に案内し、飲物を調達しようと台所へ向かおうとしたとき、電話がなった。

 「…はい、森里です」
「みちるー?あたし、ちひろですけどー」相変わらず元気いっぱいの声にあたしは苦笑い。
「言わなくてもわかるわよー。土曜日はありがとねー」
「あのさー、土曜日に使ったCD、今からみちるん家に持ってきていいー?」
「えっ、いいの?」
「うん。実は沙也も一緒でさー、もう近くまで来てるんだー」
「じゃあ、おいでよ。うちに玲奈が来てるから」
「わかったー。じゃあ、後でねぇ」
 本当に数分も立たないうちにちひろと沙也がやってきて、あたしと玲奈を交えた4人で、おしゃべり会が始まる。

 「せっかく4人そろったんだからさ、買い物にでも行かない?」
 ちひろが言い出して、あたしたちは出かけることになった。
「あ、玲奈そのペンケースかわいいねえ。」玲奈がよく行くという雑貨屋で、沙也が玲奈の手にあるプラスチックのペンケースを見ていった。 
「あ、沙也もそう思う?あたしこれにずっと目をつけてて、バイト代入ったら買いに来ようと思ってたの。色違いもあるから沙也も買わない?」
「そうだなぁ・・・そうしようかな」
「ねぇ、どうせならこれ4人で色違いにしない?」
 ふたりの会話を聴いていたちひろの一声にみんなのって、ちひろが薄いグリーンの、沙也が黒の、玲奈がピンクの、あたしが淡いブルーのペンケースを買った。
 なんか、いいなぁこういうの。女の子しかできないって感じでね。おそろいの洋服なんかは嫌がるくせに、友達同士でさりげなくおそろいの小物を持ち歩くのは好きだよね、女の子って。
「お披露目は今度の放送のミーティングの時ね」とかなんとか言いながら。
 
 何かちょっとうれしい気分で雑貨屋を出て、行き付けのティーハウスに向かおうとしたとき。
「よぉ、みちるじゃねーか!」
 その声に振り向くと、にこにこ顔の拓巳、大地くん、拓巳とおそろい(たぶんバスケ部の)のジャージを来た男の子、それから見覚えのある桐葉の吹奏楽部の子、そんな集団の中に一人だけいた女の子…夏菜が立っていた。
 あたしはなぜか口がきけずに、その場に突っ立っていた。
 同じクラスだからしょうがないけど、どうして夏菜が拓巳と一緒にいるの?そんな気持ちで。
 
 「何、買いもの?」
 大地くんが沙也に話しかけて、それを誰かが冷やかしたもんだからその場は一気に大騒ぎになった。
 だけど、あたしはそれにのれずにただ突っ立っていた。心の中になんとなく暗い感情がわいてくるのを感じながら。
 同じ教室で会えるのだから、何も学校出た後でも一緒に行動することないじゃないかって。…何かあたし、夏菜にやきもち焼いてる。拓巳のこと好きじゃなきゃ、絶対にそんなこと考えないはずなのに、あたし嫌な子になってる。それに気づいたとき、なんだか泣きたくて止まらなくなった。
 
 「あ、友達待ってるからもう行くね。さっ、行こうみちる。」
 急に沙也がそう言ってあたしの背中を押し、ちひろと玲奈が待ってるティーハウスとはなぜか逆のほうへ歩き出した。そのうち人通りの少ない路地に入り、それまで無口だった沙也がぽつりといった。
「その真っ赤な目、コンタクトのせいにしなよ。ちひろと玲奈には」
 
 沙也は、気づいてたんだ。あたしが泣きそうになっていること。拓巳達の前で泣き出さないように気を使ってくれたんだ。
「何があったのかは、あたしで良かったら後で聞くわ。だけどちひろたちの前ではいつも通りにできるわね?二人によけいな心配させちゃだめよ」
「うん…ありがとう沙也」

 沙也は大人だ、って思った。(あたしの勝手な思い込みかもしれないけど)自分だってもっと大地くんと話したかっただろうに、こういう冷静な判断と気遣いができるのだから。…くやしいけど自分にはそんなことできないから。
 
 「もう、大丈夫ね?」沙也が聞く。ティーハウスはもう目の前だ。あたしはうなずき、ドアを開ける。 
「ごめんねぇー待たせて。ちょっとコンタクトずれちゃったからさ、トイレ行ってくる。
あたしの分、アイスグレープフルーツティーとフルーツワッフル頼んどいてー」

 笑顔だ。このテーブルを離れるまでは。トイレのドアを開けるまでは。平静を装って、だけどちょっと早足で。
 ドアを閉めて、すぐにコンタクトを外す。周りに気づかれないようにちょっとだけ泣いて、顔を洗って、コンタクトを入れて、鏡に向かって笑顔。そうしてようやくトイレを出て3人の待つ席に戻ると、それに気づいた沙也があたしをちらり、と見る。
「ダイジョウブ?」・・・・・「ダイジョウブダヨ」さりげなく沙也に瞳で語りかけた。

      (「友達のまま」(6)に続く)
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