blog 「友達のまま」(4) Story Box
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「友達のまま」(4) 友達のまま 2005年06月09日[17:26]
 翌日。
 大会の行なわれる県立ホールでバスから下り、各自の楽器をトラックから下ろしてもらい、直前リハーサルの行なわれる場所へ移動しようとしたとき。

 「みちる!久しぶり!」
その声に振り向くと、中学の同級生・望月夏菜(もちづき・かな)がいた。
「カナ!久しぶりだねぇ。元気?」
 夏菜は小学生の頃から吹奏楽一筋で、高校に入るときに桐葉の吹奏楽部からスカウトが来たくらいの腕前の持ち主。
 拓巳と一緒に桐葉に入学して、(別々の高校を自分で選んだとはいえ)今はうらやましいの一言でしかない。 

 「みちる、いつもラジオ聞いてるよ。あれ、おもしろいねぇ。みちるのマニアックぶりが出てるよねぇ」
「それって・ほめ言葉?」
「もちろん!あたしあんまりラジオ聞かないんだけどさ、『B・E』だけは必ず聞いてるんだから」
「ありがと。…今日はがんばろうね。桐葉も藤女も地方大会に行けたらいいねぇ」
「地方大会なんて小さいことは言わないの!あくまでも目指すは全国よ」
「全国大会常連の桐葉と一緒にすんなよー!たのむよ・カナさーん」
「大丈夫よー!藤女だって毎年地方で5位以内入賞してるんだから。あと一つか二つ上げればいいんじゃない」 
「簡単に言うねー。・・・ま、お互い頑張りましょうや」
「そうだね。あ・集合だ。じゃあね」

 夏菜の後ろ姿を見送りながら、あたしは複雑な気持ちでいっぱいだった。桐葉の女子の夏服・白襟のセーラーを見るたびに今はうらやましくてしょうがない。
 明るく陽気な藤生の仲間たち。だけど中学の時のように拓巳が近くにいるわけじゃない。藤生女子に入学したことを後悔はしていない。だけど、最近はみんなとしゃべっててもつい拓巳や夏菜といた中学時代を重ねてしまうのだ。

 今、同じ『B・E』スタッフの大地くんと、拓巳と夏菜は同じクラスだという。同じ時間を共有している夏菜たちがうらやましい。中学の時はそんなこと考えもしなかったのに、拓巳への気持ちに気づいた今は、そんな些細なことさえもうらやましいと思えてしまうのだ。
 
 最近、なんだか自分が自分でなくなってるような気がしてしょうがない。
 マンガや小説でよく表現される、『胸がぎゅうっとしめつけられる感じ』。以前は理解できずにいた。それどころか、アイドルを見てきゃーきゃー騒いでる、あるいは恋に悩んで泣いてる女の子達を見て『ばかみたい』とさえ思っていた。
 
 だけど今のあたしには、あの頃・馬鹿にしてた女の子たちに『ごめんなさい』と頭を下げたくなるくらい、その気持ちが理解できる。
 もう、拓巳に対して友達・幼なじみという立場に満足できないところまで来ている。その上、昨夜の詩のこともずっと心のどこかに引っかかって離れない。自分は、もっとさっぱり・きっぱりしてる性格だと思ってたのに、こんなにうじうじと悩む奴だったなんて。 

 …この頃は自分で自分を持て余してるような気さえするのだ。
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