blog 「友達のまま」(2) Story Box
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「友達のまま」(2) 友達のまま 2005年05月02日[19:23]
 「よぉ、みちる。一回目聴いたぞー」

 翌日・日曜日。昨日のお説教のせいか、うだ?とへたばってるあたしに、隣の家の拓巳がベランダ越しに声をかけて、その一声であたしの目は覚めた。
「うそっ、聴いたの?あんたラジオ聴く人じゃないっしょ?」
「だって、やっぱり知り合いがあの名物番組に出るとなるとそりゃ気になるわなー。うちの学校のやつも出てるし。
…草凪大地っているだろ?あいつ、同じクラスなんだ」

 有川拓巳(ありかわ・たくみ)はあたしの幼なじみで、中学の時は同じバスケ部だったこともあって、いつも一緒にいた。
 だけど、あたしが中3の時の最後の試合で足を痛めてドクターストップがかかり、体育やお遊び程度ならともかく部活のようにハードな練習や選手としてのプレイはできなくなってしまった。
 それがきっかけで、桐葉(とうよう)高校のバスケ部からスカウトが来ていた話が消えてしまい、同じくスカウトが来た男子部キャプテン・拓巳は桐葉高校へ、あたしは学力で桐葉高に行く手もあったのだが、バスケの名門・桐葉で活躍する拓巳や他のチームメイトを見たくなくて、藤生女子高に進学した。
 小学校の時にやってた吹奏楽部に入って、同じクラスのちひろ・沙也・玲奈に出会ったのがきっかけで放送部にも参加させてもらって…そして今に至っているのだ。
 
 バスケをやめたこと、体育館でバスケ部が練習しているのを見るといまだに少し胸が痛むけど、もう一つの好きなこと・音楽に出会えたからそれでいいかな、なんて思ったりしてる。

 「ところでみちるー、今ひまか?」
「?暇だけど?」
「へっへー。久しぶりにやらん?…これ」にやりと笑った拓巳の左手には…バスケットボールがあった。
「やるっ!」あたしは下駄箱からバスケ・シューズを引っぱり出した。
 二度と選手としてバスケはできないと言われたあの日から一度も履かずにいた、少しほこりをかぶってよれよれになったシューズ。もうこれを履いてプレイできないんだ、一年前の今頃はそればかり考えて泣く日々が続いた。

 「お待たせー。どこでやるの?」
「ちゅーがっこう」
「…さてはあんた、後輩たちへの差し入れ代惜しさにあたしを誘ったね?一人で払うよりゃー、二人で割り勘したほうが安くつくもんねぇ?」ちろりとにらむあたしに、拓巳はそしらぬ顔してとぼける。
「はて?何の話かのー?…一緒に来てくれたら、これ、やるんだけどなー。欲しくないの?」あたしの前にちらつかせたのはCDレンタルショップの割引チケット。
「ほ、欲しいっ!拓巳さまー。どこまでもついていきますわー」
「…まぁ、これは兄貴からだけどさ。局にないCDはぜひここでよろしくってさ。いちお、店長と兄貴からのプレゼントだと。やっぱり顔なじみの奴が『B・E』のスタッフになったとありゃーな。」
「うれしー。今度お礼言いに行かなくっちゃ」

「それにな、後輩達がみちるはどうしたってうるせーんだ。こないだ男子部の奴らと一度行ったんだけどさ、俺たちのことさしおいて、おまえのことばっかり話題になるんだもん。あんなにすごいプレイヤーなのにもったいないって、今度来る時は絶対おまえをつれて来いってやかましく言われたからさ。」
「へぇ、あたしも捨てたもんじゃないってことやね・・・」
 わざとおどけてしゃべるけど、後輩達の顔が頭に浮かんできて、涙が出そうになる。
 
 「みちる先輩!お久しぶりです」
「会いたかったですー!寂しかったんですからー。みちる先輩達が卒業してから」
 あたしと拓巳が体育館に入っていくと、女子部の子たちがあたし達を取り囲む。
「おー、おまえら来てたのか。久々だからちょっとやっていかんか」監督の山城先生まで出てきて、しばらくは中学時代の話で盛り上がる。
「せんせー、その言葉を待ってたのよー!おい、みちるやろうぜ」
 あたし・拓巳にそれぞれ4人ずつ後輩がついて、十分間ずつ前半・後半で試合をすることになった。

 「パス、パス!」あたしは後輩に向かって叫ぶ。後輩の奈津子があたしにパスを送ったその瞬間!
「やーりっ、もーらいっ」すいっ、と横から拓巳が出てきてあっさりとボールを持っていく。
「拓巳ー!ひきょうだー」
「おめーがどんくさいんだよっ」
「なにをー!絶対決めてやるぅー!なちゅこっ、パスよこせー」
「せんぱーいっ!スリーポイント行きましょう、現役んときのあの華麗なやつ!」
「よっしゃぁー!うおりゃぁぁぁぁぁぁぁー!」放り投げたボールがきれいにゴールをくぐる。
「どーだっ!見たか拓巳っ!」
「へへん、まぐれよまぐれ。もう一本決めてみろよ」
「…おまえらもあいかわらずだなー…」審判をつとめる山城先生があきれ顔で見てる。


 「……ありがとうございましたっ!」
 結局拓巳のチームが24?21で勝ち。そりゃー名門・桐葉で一年生なのにレギュラーになろうかという奴だ。くやしいけどレベルが違う。
「みちる先輩も続けてればきっとレギュラー級ですよ。うちのおねーちゃんが言ってたもん、みちるが来ればすぐにレギュラーだったって」とフォロー?してくれる後輩の言葉に、
「しょーがないじゃん、爆弾抱えてるもん、足に」あたしは肩をすくめる。久々に暴れ回ったせいか、足が引き摺るように重くなってるのを感じていたけど、あたしはそれを黙っていた。平気なふりして後輩たちとしゃべってた。

 「おら、帰るぞみちる」急に拓巳が立ち上がり、あたしもあわててそれに続いた。
「せんぱーい!また来てくださいねー!」後輩たちの見送りを背に受けながら早足で歩く拓巳の後を必死についていく。さっきの後遺症か、まだ足が重い。正門を通り抜けたところで拓巳が急に立ち止まった。
 
 「…やっぱりバスケとかやると足がどうかあるんだろ?…乗れよ」そういうやいなやあたしをおんぶする。 
「いいよ拓巳、重いでしょ?」
「おまえ一人背負うなんて、へでもねーよ。体重は俺より軽いんだから。第一おまえやせすぎだぜ、もちょっと太ってもいいぐらいだ。出るトコも出てねーし」
「そりゃよけいなお世話だ」あたしのセリフにふきだす拓巳。でも急に真顔になって。
「…やっぱり俺、みちると桐葉でバスケがしたかったよ。おまえが故障して、もう選手としてプレイはできないって聞いたときはショックだった。できるもんなら代わってやりたかった。
みちるがバスケやってる時ってかっこいーよ。女にしとくのもったいねーくらい。だから今日はうれしかった。
…またやろうぜ、今度はおまえの足に負担かけない程度に。」

 「・・・・・・・・・・・・」
 あたしは何も言えなかった。拓巳が自分をこんなふうに見てたなんて。
 久しぶりに拓巳や後輩たちとバスケができてうれしかった。怪我した日から何も考えないようにしてたけど、やっぱり拓巳と桐葉でバスケがしたかった。…ううん、バスケじゃなくてもいい、同じ高校に通いたかった。 
 
 今日気づいた、あたしは拓巳と一緒にいたかったんだ、拓巳のことが好きなんだ・・・って。

                      (第3話に続く)
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